回る背骨

制作メモ

ステレオとモノラル

音楽を作る時にステレオとモノラルをどんな風に使い分けるのか。
何となく気になりながらも、適当にやっていることが多いので、基本的な考え方についてまとめた。

 

ほとんどの音楽はステレオ
現在、普段聞く音楽のほとんどはステレオでミックスされている。
レコード時代にはモノラル音源があり、再生する機器にもスピーカーが一つしかないことがあったが、1960年頃からのステレオレコードの普及に伴い、次第にモノラルは減っていった。
僕たちが音楽を作る場合も、最後にはステレオトラックとして完成させることになるが、制作の過程では多くのトラックを並行して扱うことになる。

制作中のトラックをそれぞれ別のスピーカーに繋げば、ステレオ2chやサラウンド5chどころではなく、10chとか20chの音源にすることも可能だ。
しかし、そのような環境を用意するのは大変だし需要も少ないので、ステレオにミックスすることになっている。
 
ステレオで録音した方がいいの?
最終的にはステレオ2chにするにしても、元々はそれ以上のトラックに分かれているので、各トラックをバランスよく割り振りする必要がある。
例えばボーカルとベースは中央に聞こえるよう左右を同じ音量で鳴らし、2本のギターは左右に割り振って、それぞれ片方からしか鳴らないようするなどだ。
この時、各トラックが全てモノラル録音されていれば分かりやすいのだが、音源によっては始めからステレオで録音されていることがある。

ソフトシンセやサンプリング音源などは、製品の品質を良く聞かせるために、あらかじめリッチなステレオ処理されていることがあるし、自分たちで楽器やボーカルを録音する時もどうせならとステレオで録音することがあるかもしれない。
ステレオで録音することは何も悪いことではないのだが、ステレオ音源のPANを変えたり、エフェクトを入れるとなると、中々扱いが難しくなってくる。
ライブの一発録りなどでもない限り、普段の録音はモノラルの方がミックスはしやすいだろう。
 
ステレオの方がいい場合もある
要は臨場感を出すためにステレオ音源を混ぜるのはアリだが、無節操にステレオ音源を使うと、空間がめちゃくちゃになっちゃうということだ。
ここを見ると、クラッシュシンバルやコード系のストリングスはステレオの利点があるらしい。また、ステレオトラックは全体の30%以内に収め、狙いを明確にした方がいいとのこと。
 
サンプル音源などでステレオのものをモノラル的に使いたい場合は、モノラル化するか左右の分離を狭くする必要がある。
この時、単純にLかRのどちらかの音だけを取り出せば、モノラルのデータにはなるが、鳴り方としてはあくまでステレオの片方になる。例えばピアノ音源で高低でPANが振られているようなものの場合、どちらかに偏った音になってしまう。
なので、モノラル化するにはLとRの双方をセンターにする。また、ステレオ幅を狭めるなら、左右に完全に振った状態から、均等にセンターに向かって狭めていく。音の発生源が目の前にあるとして、人間の耳で感じ取れるくらいの僅かなステレオ感であれば自然にミックスできるだろう。
 
人間の二つの耳でどう聞こえるか
ステレオには二つの音源があるわけだが、これは人間の耳が二つあることに基づいている。とはいえ、自分の耳でピアノを目の前で聞いたときにどう聞こえるかといったら、だいたい同じ位置から鳴っているように聞こえるはずである。
サンプル音源などはこの点を考慮せずに、不自然なステレオ感のものが少なくない。おそらく二つのマイクを離して録音しているか、下手するとモノラル録音したものを後でステレオ加工しているかもしれない。
 
ステレオの特性を活かすという意味では、バイノーラル録音というものがあり、これは人間に模した耳の部分にマイクをつけて録音する。左右のマイクの距離が人間の耳ほどしか離れていないので、リアルなステレオ感を作ることが出来る。
また、空間系のエフェクトを使って意図的にステレオ感を強めて非現実的な空間を演出することもある。スネアやクラップなどもステレオで広がりを持たせた方が臨場感が出る場合がある。
このようにステレオの音源にも利点はあるし、あんまり神経質にステレオとモノラルを分ける必要はないかもしれないが、ミックスで迷った時にチェックしてみるのはありかも。