スピニングスパイン(音楽メモ)

音楽の知識や機材の使い方の公開ノート

デジタルとアナログ

音楽制作において、デジタルとアナログの違いが気にならない人は幸せだと思う。
僕はギターで音楽を始めたからかもしれないが、デジタルにどうも慣れないところがあり、アナログの環境に拘りたくなったり、やっぱりそれはそれで面倒になってデジタルに戻ったりみたいなことをよく繰り返している。

デジタルとアナログ、
ソフトとハード、
のメリットとデメリット。

そんなことをしている内に、それぞれのメリットデメリットが分かってきて、デジタルとアナログの違いがわかるほど、二つの間の共通点も分かってきた気がする。
勘の良い人ははじめから共通する部分を見つけて、いい感じに使い分けたりミックスするんだろうけど、僕の場合は違いについて知らないと先に進めないタイプで、効率が悪くて嫌んなっちゃうけど、両方に引っ張られている内に境界がなくなってきたように思えるので、この点をまとめてみたいと思う。
 
まず、「デジタル」とか「アナログ」は何のことなのか、言葉の定義をはっきりさせようと思うが、実はこれがけっこう難しい。
アナログシンセサイザーを演奏して、ハードウェアのレコーダーに録音するのはアナログ的だが、機器を制御しているのはデジタルだったりするからだ。
 
あくまで僕の個人的な感じでいうなら、「デジタルとアナログ」には二つの意味がある。
一つはアナログ回路のシンセサイザーエフェクターなどの出す音の良さである。それをデジタル機器の音と比較する時に使う。
もう一つはワークフローにソフトを使うかハードを使うかである。
ソフトウェア上でマルチトラックを扱うのではなく、ミキサーやレコーダーなどに楽器を結線して音楽を作る場合、例えその中にデジタル機器があったとしても、アナログ的なワークフローだと考える。
でも、これは「ソフトとハード」と呼んだ方がわかりやすいので、以後そうする。
 

アナログの音の良さ

1.デジタルはアナログを完全にシミュレートすることは出来ない
デジタルとアナログの音には決定的な違いが一つある。
それは物理的な要素が音に影響を及ぼすかどうかである。
アナログの機器は、シンセでもエフェクターでもアンプでも、電気回路の中の部品の特性を利用して音を加工している。
もちろん設計は人がするし、ある程度意図したものが出来ているのかもしれないが、回路図が全てではなく、もともとの部品の特性によって、音がはみ出したり染み出したりすることがある。
デジタルの場合は「音量を大きくする」とか「指定の周波数をカットする」とかは正確にやってのける一方、計算式を超えるハプニングは起きない。(デジタルのEQは引き算は得意だが、アナログのように倍音を付加して厚みを持たせるのは苦手な気がする)
もし、部品の特性による歪みなどを再現するには、高度なシミュレート技術が必要になってくる。
今の時点でそういった技術は大分向上してはいるが、まだ完璧ではない。

2.サンプラーは同じ音を出せるが、ニュアンスを表現出来ない
デジタルとアナログの中間のような存在がサンプラーだ。
アナログシンセや楽器などを録音しておけば、実機と同じ音で鳴らすことが出来る。
ただ、音の強弱を変えたり、演奏にニュアンスをつけるようなことは出来ず、やったとしても原音ではなく、出力された音を加工することになるか、膨大なサンプリングが必要になり、クオリティにも限界がある。
つまり音は同じでもニュアンスの再現で劣ってしまう。
 
3.アナログに制限はない

例えばギターを持っていれば、普通に弾いてもいいけど、弦を半音緩めてみたり、ボディを叩いてパーカッションに使ったりとか、拳骨で殴ったりトンカチで破壊してもいいわけで、とにかく制限がない。思いつくことは即座に何でも出来る。
そして良い楽器は鳴らすだけで気持ちいい。

 

デジタルの利点

1.幅広い音色のコレクション
デジタルのソフトウェアシンセなんかだと、今までアナログシンセが出来なかったような音の合成が簡単に出来たりするので、アナログに拘らず新しい音を作る分には問題ない。
また、実機を持つには場所とコストがかかるものだが、サンプラーで代用すれば幅広い音色をコレクションできる。細かいニュアンスを必要としないなら、十分実機の代替になるだろう。
2.デジタルエフェクト
フィルターや歪み系はデジタルの再現が難しい(と僕が思っている)分野だが、リバーブやディレイなどの空間系は既にデジタルが主流だ
コンプやEQは何となくアナログがいいような気がするが、本来の目的を果たす意味ではデジタルの方が合理的だとは思う。

最後に一つ書いておくと、デジタルとアナログに関係なく、いい音がしたり、そうでもなかったりするのは実際によくあることだ。
デジタルだろうとアナログだろうと気に入った音を使えばいいというのが基本ではある。
 

ハードウェアとソフトウェア

音楽制作のワークフローにおいて、ハードウェアとソフトウェアのどちらかがいいかは人それぞれだし、新しく画期的な製品が登場すればそれも変わる可能性がある。
しかし、どんなワークフローを選ぶかによって、使う楽器が変わってきたり、それによって出来上がる音楽も違うものになったりする。
思うにここで重要なのは、自分が何にインスピレーションを受けるかということだ。
例えばモジュラーシンセイサイザーに対する興味が尽きないのであれば、それを中心にワークフローを組み立てるべきだし、パッドを叩いてサンプルを再生したいならスタンドアロンのMPCが快適だ。

Ableton Liveのようなソフトの場合、コンピューターの性能によって処理が遅かったり、安定性でハードウェアに劣ることがあるが、そういった問題を解決さえすれば、割と何にでも使える汎用性がある。
そしてハードウェアで悩まされる同期やプリセット管理などが相当楽になるので、制作に集中しやすくなるのが最大のメリットだと思う。
僕は椅子に座ってディスプレイを見ながらマウスをポチポチするのに中々慣れなかったが、最近はソフトウェア環境の方がインスピレーションを維持できるようになってきた。
 

正解は一つではない

デジタルとアナログ、双方のメリットが分かってしまえば、あとはその時々に応じて好きなものを使ってしまえばいい。
制作する上でのワークフローというのは正解が一つだけあるのではない。
むしろたくさんの制作方法があった方が自分で飽きないし、機材への不満や制限があった方がそれがインスピレーションを生んだりする。
デジタルもアナログも、ソフトもハードも、複合体として活用すればいいし、だからといって全てを同時に使う必要もない。
結局みんなやりたいようにやっていて、その中に正解もあるはずなので、作品に辿り着くまで試行錯誤するしかないんだろう。
 
↓音圧とマキシマイザーについて追記しました。