回る背骨

制作メモ

ハードウェア・シーケンサー

音楽用のシーケンサーというのは、入力した内容に従って自動演奏するマシンのことで、現在ではDAWと呼ばれるソフトウェアが主流だ。
しかしシーケンサーにもいろいろと歴史があり、ハウスミュージックやヒップホップなどは特定のそうした機材によって生み出されたといっても過言ではない。
ハードウェアのシーケンサーを中心に、タイプ別の特長や向いているジャンルをまとめてみた。

 

ステップシーケンサー

シーケンサーというのは、命令に従って演奏するマシンである。
Sequenceという言葉には「順序」とか「連続」という意味があり、プログラムに従ってテンポ良く動作することで音楽的な表現になる。
単純なところではドラムマシンで、バスドラムやスネア、ハイハットなどの音を順序よく鳴らしたものをループさせる。
1980年代のTR-808に代表されるドラムマシンたちは、1小節を16分割したスイッチを持ち、各パートでそのオン/オフを操作することで、リズムパターンを作ることが出来た。
この仕組みはステップシーケンサーと言われ、クラブミュージックなどループを多用する分野では今でもよく使われている。
 
ステップシーケンサーを使ったマシンで他に有名なものではTB-303というベースマシンがある。
これもドラムと同じように16分音符が1小節分並んでいるシーケンサーだが、ベースなのでオン/オフだけでなく音程もコントロール出来るうえ、さらにスライドやアクセントといった音色や音量に関わる情報もステップで変化させることが出来た。
 
TR-808TB-303による演奏
 
これらのマシンは当然同期され、組み合わせることで様々なパターンを作れるようになった。
2017年現在、ステップシーケンサー搭載のドラムマシンやシンセサイザーサンプラーはいろいろ存在するが基本的な使い方は共通していて、1小節をループしながら展開していく。
シーケンスを再生しながらでも、ステップごとの編集が出来るので、全体的な流れを変えずに変化を加えていけるのがステップシーケンサーのいいところ。
また、ステップを再生しながらシンセサイザーをいじることも出来るので、シンセの能力を最も発揮しやすいといえる。
 
Elektronというメーカーの機械はパラメーターロックという機能で、ステップごとに様々なパラメーターを変化させることが出来る。
 
KorgのVolcaシリーズには、ステップを飛ばしてループのタイミングをずらすアクティブステップなどの機能もある。
 

サンプルシーケンサー(MPCタイプ)

AKAIのMPCのようなサンプルを組み立てるタイプのシーケンサーは、1小節なり2小節のシーケンスをループさせて展開を作っていくという点で、ステップシーケンサーに似ている。
が、オーディオを扱えるため音色の幅が広く、ステップ単位ではなく、リアルタイムでパッドを叩くことによってサンプルを再生する。
ステップシーケンサーのようなステップごとの編集は苦手だが、フレーズごとの再生が得意なので、同じサンプルを繰り返し流し、パターンで切り替えることが多い。
これはDJがレコードをミックスする感覚に近く、サンプリングを多用するヒップホップの制作に適している。
基本がループなので、いかにそこをかっこよくするかが重要で、後はラップを乗せたり、トラックミュートしたり、単発的なサンプルを入れたりして展開を作る。
 
 
MPCならではの使い方が二つあって、一つはタイムストレッチ。サンプリングしたフレーズのスピードを曲に合わせて変えられる。
もう一つはチョップで、サンプリングしたフレーズを切り刻んで、順序を並び替えるなどして新しいフレーズを生むことが出来る。
 
作成したシーケンスは、ソングモードで並べることが出来るので、例えば「イントロ」「Aメロ」「サビ」などをパートごとに作成して曲を完成させるような、MIDIレコーダー的な使い方も出来る。
 
シンセサイザーなど外部機器を同期するのもアリで、Ableton Liveのセッションビューなんかは正に、MPCのワークフローにシンセサイザー(インストゥルメント)を同期させたものだ。
 


Akai MPC Live and MPC X exclusive play at westendDJ

これから発売されるMPC XやMPC LIVEはタッチディスプレイ付きなので、ソフトウェア制御のステップシーケンサーとしても使える。
また、オーディオトラックも扱えるので、Liveのセッションビューが今度はスタンドアロンのハードウェアになった感じだ。
 

打ち込み(ステップレコーディング)

「ステップ」という言葉があるが、ステップシーケンサーと混同しないように。
古くはYamahaのQXシリーズというものがあったらしく、独自のキーボードが付いていて、それで音符を入力していったらしい。
DAWを含め、多くのシーケンサーは「リアルタイムレコーディング」と「ステップレコーディング」を選ぶことが出来て、「ステップレコーディング」は、一音ずつ手入力していくため演奏によるミスがなく、コピペなどを使って、どんどん作り進められるメリットがある。
エディットが前提のため、入力したものを修正することも、同じ工程の中で行えるので、作りこむのにも向いている。
現在は打ち込み用のハードウェアというのは無く、完全にコンピューターでの制作に移行している。
片手でコンピューターを操作し、もう片方の手で鍵盤を叩くようなイメージだ。
ループ系以外のほとんどの音楽ジャンルに向いている。
 

賢いシーケンサー

特殊なジャンルだが、今後発展がありそうな気もする。
YamahaでいえばQYシリーズというのがあって、コードとパターンを指定することで自動伴奏することが出来る。
この辺の機能のハードウェアも現行ではほぼ無くなってしまったが、パソコン用のソフトで似たようなことが出来るものはあるみたいだ。