回る背骨

制作メモ

コンピューターと仮想空間

バーブをかけると歌が上手く聞こえるようになる、というような感じだったり、一般的にも「カラオケのエコー」として広く認知されている音響効果のリバーブだが、僕はその重要性に全く気付いていなかった。
どっちかっていうと乾いた音の方が好きというのもあるが、安直にリバーブをかけた音楽のうさんくささに気が引けていたというか、リバーブは強すぎる香水みたいな印象があったのだ。

 

バーブで空間を作る

部屋で生の楽器を録音するなら、リバーブはかけなくていいし、装飾的に音に広がりを与えるための一つのエフェクターでしかない。
しかし、コンピュータで音楽を作る場合は、リバーブによって音を仮想的にコンピュータの外に出すことができる。

具体的にいうとセンド/リターンに「アンビエンス」とか「ルーム」とか呼ばれる設定のリバーブをつないで、各トラックから適量をセンドする。
そうすることでバラバラだったコンピュータ上の音源が疑似的に同じ空間に集まって、音がまとまるのだ。

Convolution Reverb(コンボリューションリバーブ

実世界の音響を再現する手法に、「コンボリューションリバーブ」というのがあり、現在のリバーブの主流になりつつある。

IR(インパルスレスポンス)を自分で作成すれば、自宅で鳴った音をマイクで録ったようなニュアンスを追加することもできる。
https://www.ableton.com/ja/blog/make-your-own-impulse-responses-live-9s-convolution-reverb/

IRを作成すれば、リバーブだけでなく、アンプを通した音やフィルターなどのエフェクトの再現も可能で、様々な方法で仮想空間が作り出せる。

 

音の距離感を知る

人間の耳は「大きくて近い音」は全ての帯域がよく聞こえるが、小さい音や遠くの音だと高域や低域が聞こえにくくなる。
そして、日常の中で耳のすぐ近くに音源があることは少ない。
コンピューターの音源をそのまま使うと、現実にはあまり無いはずの「大きくて近い音」ばかりになってしまうような気がする。

本来は近くの音でも音が小さければ低音は減衰し、離れた場所から聞こえる音は高音が減衰する。
人間の耳に残りやすいのは、300Hz~2KHzくらいの中音域と考えられるので、普段聞こえている音は自然にそれ以外の音域がカットされているともいえる。

それに、人間の耳の話は置いても、音自体が空気の振動なので、周波数ごとの特性もあるかもしれないし、部屋の広さや壁の材質、温度や湿度など?様々な要因で変化する可能性が想像できる。
これらの環境の影響を受けず、どの音域も全く減衰しないようなクリーンな音は、文明が進化した現代だから実現できるのかもしれないが、我々の体はもちょっと指向性があるので(デジタルではないので)、逆に不自然に感じてしまうのだろう。

バーブの使い方(加筆予定)

センドリターン

バーブを使う上でまず注意が必要なのは、音源に直接繋ぐかセンドリターンで繋ぐかで意味合いが全然変わってくるということだ。

音源に直接リバーブを繋いだ場合、入力された音はリバーブによって加工されて出力される。(=元の音が変わる)
センドリターンを使った場合は、音源はそのまま何も加工されずに、リターントラックに送られてきた分だけが加工される。

室内の残響音などをシミュレートする場合は、元の音が変わってしまったらおかしいので、センドリターンで接続する必要がある。(その場合リバーブ側のウェットは100%にすることを忘れないように。残響音に元の音が含まれるのもおかしいので)
リターントラックに送るセンド量で、リバーブの量を調節できる。

 

仮想空間をうまく作ることで、コンピュータで孤立したソフト音源を仮想的な物理空間の中にミックスできるのだ。