スピニングスパイン(音楽メモ)

音楽の知識や機材の使い方の公開ノート

楽器の練習について

楽器の練習は辛い。

そんな言い方をすると、まるで自分が上手に楽器を弾ける人みたいだが、僕の場合は練習の前にその辛さを想像してしまい、結局サボるので、本当はそんなに辛い思いはしていない。

でも、やっぱり練習しようかと思うこともあるので、そのへんについて考察してみた。

 

 一.楽譜の通りに弾く

楽器の練習は「譜面通りに弾く」ことからはじまる。
パソコンのキーボードの入力を練習するような感じで、目から入ってきた情報を指でインプットしていくわけだ。
ただし、楽譜の場合は普段から使っている文字と違って、慣れていないと読むだけでも時間がかかってしまう。
鍵盤楽器の難易度をパソコンのブラインドタッチ習得と比較するなら、「パソコン初心者にアラビア語のブラインドタッチを習得させる」ようなものだ。
つまり、まずは楽譜を翻訳する基本的な知識が不可欠になる。


楽譜が読めるようになれば、あとはパソコンのキーボード操作とそんなに変わらない。ただ、パソコンのブラインドタッチでもそうだが、楽器の奏者はキーの配置を頭で覚えているというより、「どこを叩くべきか」感覚で覚えている。
この状態になるには毎日の反復によって、無意識的に体が動くまで繰り返すしかない。
(もしもコンピューターのキーボードの代わりに、普段から鍵盤やギターで文字なんかを入力していたら、たやすく習得できるはず)


ただ、これはあくまで基本的なレベルの話であって、中上級者向けの曲など技術的に複雑なものをやろうとすれば、もっと難易度は上がってくる。
単純に左右の手で違う動きをするのだって難しいことだし、反射神経も必要だ。
これにはスポーツと同じでさらに訓練が必要になる。

 

二.リズムよく弾く

それから音楽はリズムよく弾く必要がある。
順番に鍵盤を叩くだけでなく、決められたテンポに合わせて演奏する。
このへんは文字入力とは違って、正確なリズム感が必要で、ダンスなんかに近いかもしれない。
両手を使って別々のリズムが必要なケースもあり、こういったことも体で覚える必要がある。

そんなとき、楽譜を読みながら演奏するのは難しいと思う。
台本を読みながら演技するようなもの、または説明書を読みながら机を組み立てるとか、そういうと同じでテンポがよくない。

音楽の場合、楽譜なしでも音で覚えることも出来るし、音で覚えてしまえば、そもそも楽譜はいらないくらいだ。
自由に弾くのと楽譜を見ながら弾くのでは、好きなように喋るのとセリフを言わされるくらいの違いがあり、セリフに集中するとその分内容が頭に入って来なくなったりする。
そういうわけなので、リズムよく演奏したいなら楽譜はそのへんに放り投げた方がいいだろう。

 

三.暗記と完璧なコピー

よって第三の挑戦は丸暗記してしまうことだが、クラシックの楽譜などを一曲丸々覚えるのはそれなりに大変なことで、何曲もとなると相当な労力だ。
いきなりすべてを覚えるのは難しいので、段階として少しずつ楽譜を読み、技術的な問題を解決しながら覚えていくこともあるだろう。

要はたゆまぬ練習によって、楽譜を完璧に覚え、完璧なリズムで演奏出来るようになればいいということ。

でもそれって大変だし、ただ譜面通りに演奏するだけでなく、自分なりのアイデアも入れて、かつもっと楽に出来ればいいのになと思う。
普通の人は結局ここで挫けてしまうのではないかな。

 

四.ズルする(コードで覚える)

そこでコードである。
全ての音を絶対的に覚えるのではなく、コードで覚える。
一つのコードで一小節とかを埋められるので、楽譜通りでなくても、けっこう適当にやっても何となく演奏できるのが利点だ。
単純に楽譜を覚えるのでも、コードを知っている人と知らない人では効率が違う。
逆にいうとコードを知らないということは、漢字をカタカナなしで、すべてひらがなのぶんをよむようなものだ。

コードというのは、先人の経験から生まれた音楽の財産のようなもので、その分枠組みの中に縛られるわけだが、便利なものはとことん使うのが人間だろう。
ジャズやブルースなんかはそうやってコードを利用しながら、多様性を獲得していった。
ヒップホップでレコードをサンプリングして曲作りするのもそれに似ていて、ズルといえばズルだけど、完璧な模倣には意味がないし、 真似するだけ真似して、あとで作り替えてしまえばいいのだ。

 

五.自分なりに弾く

絶対的な記憶は放っておくとすぐに消えてしまう。思い出そうにも絶対的なだけにとっかかりが少ない。
なので部分的に反復したりモジュール化したり、ストーリー性を持たせることで、自分の脳に焼きつける工夫が必要だ。

そしてそういう「工夫をする」ことが、実はとても重要なことだと思う。
丸暗記してコピーするということは(それ自体が普遍的な分)、自分にとっては必然性が薄いともいえる。
仮に楽譜通りに完璧に弾けたとしても、それは他の人がやっても全く同じになってしまうから。

単純に楽しみたいなら、自分の好きな部分を選択して組み合わせていく方が理にかなっているし、発展性もあるように思う。

とはいえ、それには知識や練習も必要なので、これらの工程全てを繰り返していくしかないのかもしれない。